~DanceとSakeを愛する者のメモ~      Dance studio R
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面白い!!

CINRA.netよりコンテンポラリーダンス入門
インタビュー記事行ってみよう〜

『もっと流行ってもいい。
想像を超えるコンテンポラリーダンス入門』

インタビュー・テキスト:萩原雄太


PROFILE
長谷川達也(はせがわ たつや)
DAZZLE主宰・ダンサー・演出家。SMAP、V6、Mr.Children、ケツメイシ、TRF、BoA、東方神起などのライブ出演・振付の他、振付日本一を決めるLegendTokyo、TheatriKA‘lコンテストのW優勝。また、国内演劇祭での最優秀作品賞、若手演出家優秀賞を始め、海外では韓国:アジア演劇祭、ルーマニア:シビウ国際演劇祭の他、中東最大のファジル国際演劇祭からの招聘、4部門ノミネート、2部門において受賞。本年3月には歌舞伎界の立女形にして人間国宝である坂東玉三郎氏演出舞台『バラーレ』(東京・赤坂ACTシアター)にDAZZLEとして主演。振付も担当。現在は来年秋に予定しているDAZZLE結成20周年舞台公演に向け鋭意制作中。11月7日(土)に東京・東銀座にある東劇にて「DVD『二重ノ裁ク者』発売記念プレミアム上映会」が開催決定。イープラスにてチケット発売中。

川村美紀子(かわむら みきこ)
1990年生まれ、16歳からダンスを始める。日本女子体育大学(舞踊学専攻)卒業。2011年より本格的に作品を発表し、2012年初演の『へびの心臓』は、国内外で上演を重ねている。その活動は、劇場にとどまらず、屋外やライブイベントでのパフォーマンス、映像制作、弾き語りライブ、自作品の音楽制作、レース編みなど、表現活動を多彩に展開。2014年『インナーマミー』初演、トヨタコレオグラフィーアワード 2014「次代を担う振付家賞」及び「オーディエンス賞」、横浜ダンスコレクション EX 2015「審査員賞」及び「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞。

本山敬一(もとやま けいいち)
1977年倉敷生まれ。SIX所属。クリエイティブディレクター。"A Fusion of Technology with Humanity"をテーマに、メディアを問わず人の心に残る体験をつくる。代表作にPokémon GOのトレーラ―、amazarashiのMV『季節は次々死んでいく』、Nexus 7のCM、Google Chrome 初音ミクなど。カンヌをはじめとした国内外のアワードで受賞多数。
http://sixinc.jp/#work/

学校のトイレで女子高生が狂ったように激しいダンスを見せる。amazarashiの2ndシングル”スピードと摩擦”のMVで振付を手がけたのは、今、コンテンポラリーダンス界で大きな注目を集めるダンサー・川村美紀子だった。amazarashiの楽曲が持つ暴力的なまでのパワーと、焦燥感を象徴する激しい振付で鮮烈な印象を残したMVは、ネットでも大きな話題となった。
ところで、「コンテンポラリーダンス」とは何なのだろうか? 「コンテンポラリー=現代の」という言葉から見れば、今話題の川村美紀子の振付・ダンスは、まさに「コンテンポラリー」と言える。しかし、どのようなダンスが「コンテンポラリーダンス」なのか? と聞かれれば、説明は難しい。

今年、横浜で開催されたダンスフェスティバル『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2015』でも、バレエやストリートダンスの公演とともに、カナダのダンスカンパニー、カンパニー・マリー・シュイナールや、森山未來による『JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より』、パリオペラ座でも活躍する勅使川原三郎の『ミズトイノリ - water angel』など、コンテンポラリーダンスと呼ばれるさまざまな作品がプログラムされた。

そんなコンテンポラリーダンスに、どうして人々は魅了されるのだろうか? 

そこで、今回は川村美紀子とともに、「ストリートダンスとコンテンポラリーダンスの融合」を掲げるDAZZLEの長谷川達也、amazarashiのMVで川村を起用したクリエイティブディレクターの本山敬一に、コンテンポラリーダンスの魅力についてたっぷりと語ってもらった。

……すごい。今の話、私も「コンテンポラリーダンス」がよくわかっていなかったので、とてもためになります。(川村)

―今日は「コンテンポラリーダンス」をテーマとした鼎談ということで集まっていただきました。ただ、一言で「コンテンポラリーダンス」といっても、定義や解釈がまちまちで、「これがそうだ!」ということが言えないジャンルですよね。

長谷川:僕自身も、コンテンポラリーダンスってそもそも何かわからない部分があります。ダンスのジャンルには頓着がないのですが、もともとヒップホップが好きでダンスを始めて、ジャズダンスのよさや、さまざまなダンスのよさを取り入れながら踊ってきました。そんなときに、誰かから「コンテンポラリーダンサーですよね?」って言われたんです。「ストリートダンサー」という自負はあったんですが、「コンテンポラリー」と言われたのは初めて。それで「コンテンポラリーダンスって何だろう?」と思って調べたのが、このジャンルとの出会いですね。

―実際に調べてみて、「コンテンポラリーダンサー」と言われたことには納得できましたか?

長谷川:あるイベントで舞踊家・振付家の杏奈さんと意気投合して、一緒に作品を作ることになったんですが、ワークショップに参加し、ストリートダンスとは異なった方法でダンスが作られていくのを見て、コンテンポラリーダンスと言われたことがようやくつかめたような気がしました。ストリートダンスには、ある程度決まったステップがあり、それを組み合わせてダンスにする。けれど、コンテンポラリーの場合には「存在していない身体の動き」を組み合わせることでダンスにしていきます。ダンスに対する捉え方、発想の方法が、より自由なんです。そんなコンテンポラリーの自由な部分と、僕がジャンルに頓着せずに踊っていたこととの共通点を感じましたね。

川村:……すごい。今の話、私も「コンテンポラリーダンス」がよくわかっていなかったので、とてもためになります。録音してスピードラーニングの教材にしたいです……。

一同:(笑)。

長谷川:川村さんもストリートダンスをやっていたんですよね。

川村:クラブに行って、わーって踊っていました。今はいろいろな優しい人が「おいでおいで」って、コンテンポラリーダンスの世界に招いてくれているような感じです。

―川村さんは『トヨタコレオグラフィーアワード』や、『横浜ダンスコレクションEX 2015』といった、コンテンポラリーダンスの賞を数々獲得していますが、自分ではコンテンポラリーダンスを踊っている自覚はない?

川村:そうですね……。もともとは「ヤスダ」に通って、ダンスを教えてもらっていたんです。

―「ヤスダ」って何ですか?

長谷川:ストリートダンス界で知らない人はいない、新宿にある損保ジャパン日本興亜本社ビル(旧・安田火災海上本社ビル)の通称です。1Fの大きなガラスが鏡のように映るので、いろんなダンサーが練習で集まっていたんです。

―なるほど(笑)。ストリートダンスから、いつの間にかコンテンポラリーダンスに越境してしまっていた川村さんにとって、コンテンポラリーダンスの魅力ってなんなのでしょうか?

川村:うーん……、「コンテンポラリーダンスの魅力」というテーマをもらって考えていたんですが、それを話すこと自体が、すでにコンテンポラリーではないと思います。だって「現在」って言ったら、すでに過去のことになってしまいますよね。「コンテンポラリー」って呼ばれること自体が、すでに過去の扱いのような気がする……。

―「コンテンポラリー」は、辞書通りには「現代の」という意味ですが、川村さんは、まさに「今、この瞬間」に作りだすイメージを持っているということですね。では、踊る立場ではなく、観る立場である本山さんはいかがでしょうか?

本山:2005年頃から観始めました。もともとは中原昌也のようなノイズミュージックが好きで、彼が「BABY-Q」(関西出身のダンサー・東野祥子が主宰するカンパニー)のサウンドを手がけていたのがきっかけです。それ以前も、映画に出てくる暗黒舞踏のようなものは観ていましたが、ちゃんとお金を払って公演に足を運んだのはそれが最初ですね。

―ダンスのどのような部分におもしろさを見出したのでしょうか?

本山:現代音楽やノイズミュージックって、一聴すると音楽に聴こえないものが多い。けれども、60分間どわーっと聴いていると、1秒くらいだけ音楽に聴こえる瞬間があるんです。その「1秒の強度」のほうが、ポップで耳触りのいい音楽を聴いているときよりも「おお!」と感動するんです。聴いているときはぶっちゃけ「はやく帰りたい……」と思っているんですが(笑)、後々まで記憶や体験として残るのは耳触りのいい音楽ではなく、ノイズの中の1秒なんです。同様に、コンテンポラリーダンスを観ていても、なんだかよくわからない動きをしていることがほとんどなのに、めちゃくちゃかっこいい瞬間があります。それは、解釈する側の問題なのかもしれないけど、踊りに見えないものが踊りに見える瞬間みたいなのが、すごくかっこいいなって思って観ています。
川村さんの「動き」があまりにもすごいので、撮影の最後に「一発踊ってください」とお願いしたところ、「裸で踊っていいですか?」と。(本山)

―本山さんが監督されたamazarashiのMV“スピードと摩擦”は、川村さんがトイレの中で激しく踊るダンスを振り付けて大きな話題となりました。どのような経緯から、川村さんへのオファーが実現したのでしょうか?

本山:“スピードと摩擦”は、「焦燥感」がテーマだとamazarashiの秋田さんに説明されて。歌詞が捉えづらい曲なので、焦燥感だけは残したいと考えました。学校という他者の視線があふれる中で、唯一孤独になれるトイレという空間で、女子高生が「自分だけが足りない、置いていかれてるんじゃないか……」「アーッ!」って暴れることで、焦燥感を表現できるかな、と。動きはなるべくカオスで強度あるものがいいと思い、コンテンポラリーダンスで今一番やばい人を探してたら、川村さんに辿り着きました。

―たしかに川村さんのダンスは、スピードがものすごく速いですし、細かい痙攣のような動きが入っていたり、焦燥感をイメージする部分もありますね。

本山:当初は川村さんは振付だけで、出演する予定はなかったんです。女子高生ではないので(笑)。ただ、現場で目にした川村さんの「動き」があまりにもすごいので、撮影の最後に「一発踊ってください」とお願いしたところ、「裸で踊っていいですか?」と(笑)。一応、世に出すかもだったので「ダメです」と言って、急遽衣装を購入してきてもらいました。

川村:朝5時にドンキホーテを駆けずり回ったんですよ。

本山:で、帰ってきたら、全身網タイツで頭に花輪を着けていたんです。それで「最後なのでトイレを壊してもらっていいです」と、一発撮り。すさまじいオーラを放つ踊りでした。それまで40時間くらい撮影を続けていたので現場も疲れきっていたんですが、川村さんが踊りはじめた途端、スタッフみんなもあっけに取られ、最後は「最高の現場だったよね!」と、元気に帰って行きました(笑)。

―(笑)。それで本編にも使われることになったんですね。

本山:ただ「ダンサーのすごさ」って、映像には残らない部分もあります。例えば、川村さんが踊る前にストレッチをしているときも、背中から「ゴォォォー」と、生命力のようなエネルギーが出ているのを明らかに感じるのですが、そういうのはさすがに映像には映らないんですよね。



コンテンポラリーダンスに、いかに興味を持ってもらえるかについてはいつも考えていますが、観ないとわからない部分がどうしてもある。(長谷川)

―ここ数年、義務教育にもストリートダンスが加わり、ダンス教室が盛り上がりを見せています。またそれとともに『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA』のような、さまざまなダンスをボ

ーダレスで取り上げるイベントが増えるなど、ダンスを踊ることも観ることもかつてより身近になっています。表現者として、あるいは観客として、これからコンテンポラリーダンスをもっとおもしろくしたり、シーンを活性化していくためにはどのようなことが必要だと思いますか?

長谷川:コンテンポラリーダンスを観に来てもらうのはなかなか難しいですよね。いかにして興味を持ってもらえるかについてはいつも考えていますが、観ないとわからない部分がどうしてもある。ただ、『Dance Dance Dance @ YOKOHAMA』のように、いろんなダンスを観られるイベントが増えているのは表現者としても素敵なことだと感じています。ダンスがどんどん身近なものになってきているので、そこからさらにいろいろな作品を観てほしいです。その中で、きっと好きなモノに出会えたり、新しい発見や衝撃を見つけられるのではないでしょうか。

川村:でも日々の生活の中で、人々が「これいいな」って、何かを大切に思える感情を自覚できる環境が増えていかないと、コンテンポラリーダンスも広がらないんじゃないかと思います。いくら「ダンスやってるよ」「おもしろいよ」「観に来てよ」と言っても、ダンスをおもしろいと思える気持ちが持てない生活をしていたら意味がないと思うんです。

―つまり、劇場に足を運ぶ以前の生活から、ゆとりを持てなければならない、と。

川村:いくら「絵を買ってくれ」って言っても、絵を飾るような環境になかったら買わないのと同じです。

―本山さんはいかがでしょうか?

本山:ロベール・ブレッソン(1901~1999年)というフランスの映画監督は、著書『シネマトグラフ覚書―映画監督のノート』(筑摩書房)で、「人は動くものを見るのが大好きだ」と語っています。僕には1歳半の子どもがいるんですが、やっぱり踊りとか動くものを見ているのが大好きなんです。人には「運動量の大きいものを見たい」っていう本能があるんでしょう。

―「ダンスを見たい」という欲求は、本能に根ざした行為なんですね。

公演は終了いたしましたがフィガロやパンより

"OL"!? アーティスト川村美紀子新作
『まぼろしの夜明け』東京公演に向けて、インタビュー



■ 見えない力に導かれる身体

あっという間に注目の人となり、数々の賞を受賞した川村。海外公演も多く、来年は在日フランス大使館のスカラシップで、半年間フランスで研修を行う。クラブで遊びながらダンスの練習をする大学生だったデビュー当時から見ると、環境も状況もがらりと変わった。
「客層も広がり、大人社会とかかわることが増え......戸惑いはしますが、目の前のことを精いっぱいやるしかないですね、今の私には」

この頃、身体の感覚が急速に変わっているのを感じる、と川村は言う。
「身体を自分の意思でコントロールして動かそうとすると、身体の中、特に関節が内側から鈍くて重くてキレの悪い鉈みたいなもので、くーーーっとえぐられるような感じがするんです。なんか、油が切れかかっているロボットみたいな感じ。無感情の中でギシギシ身体の部分をバラバラに動かしている。だからやめよう、と思ったんです」
先月行われたソロ公演『春の祭典』ではほぼ全裸に近いスタイルで、四方を客席に囲まれた小さな舞台に立った。ストラビンスキーの音楽が川村の身体から溢れ出て、天に吸い上げられていくように私には見えた。まさに捧げもの、"巫女"の身体を見る思いだった。
「自分の意思でコントロールするというよりは、身体が音楽を吸収して勝手に動くのに任せた部分が多かった。あらかじめ振付の流れは作ってありましたが細部はその時の空気が創りだしていたと言っていいと思います」

金沢での合宿生活では、生活習慣やものの考え方に至るまでひとりひとりが違うものを持っているということを改めて肌で感じた。そんなことも"コントロールするのではなく自然の流れを尊重する"という思考にシフトするきっかけになっているという。
「自然の流れの中で、限界までその人の存在感を際立たせていく、際立った存在感同士のぶつかりあいが、ダンスと言う表現になればいい、そう思っています」
他者との闘いは、裏を返せば自分との闘いでもある。注目や期待など、自らを縛り付ける何かから緩やかに解放されるために今、川村美紀子は自分との闘いを余儀なくされているのかも知れない。

■ 私の肩書は"OL"です

「私は自分をダンサーとは名乗りません」
と川村は言う。ダンサーとは、踊らない人が付けた呼び名なのだと。......そうかもしれない、踊りという表現スキルに対して観客となる私たちが勝手にそうカテゴライズしているだけで、実は私たちがダンサーと呼んでいる人たちの中には"踊ることを職業にすることが目的"である人と"自分の表現手段としてたまたま身体を使っている人"がいる。そして、川村は圧倒的に後者である。あんなに高い身体性を持つのに? と思われる方も多いとは思うが、彼女は作曲・歌・詩・文章・絵画・書(紫水、という屋号も持っている)、めちゃくちゃ幅広いジャンルから表現を行っている。そんな自分のことを笑いながら、
「私はOLです、って言ってます。Orgasms Lady」
と川村。あらゆる局面に感度の鋭さを発揮する彼女にぴったりの表現かもしれない。
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